BasiliskIIに漢字Talk7.5.3(68k)をインストールする
September 01, 2021
emulator macOS ClassicMacintosh目次
はじめに
Motorola MC680x0 CPU搭載のClassic MacintoshをエミュレートするBasilisk IIで、往年のSystem7~MacOS8.1が動きます。
これらは、Macintoshが世間に認知されてきた頃(1990年代)のOSで、巷ではWindows95も出現し、WindowsかMacかなんて論争も起こっていました。Macintoshも普及するにつれ、その低品質さも露呈してきて、Appleも傾きかけて苦しい時期だったと思います。
本稿では、漢字Talk7.5.3をBasilisk II上にインストールし、当時を振り返ります。その後のMacOS8.5からはCPUがPower PC専用となり、Basilisk IIでは動作しません。Power PC 搭載MacintoshはSheepShaverでエミュレートすることができます。SheepShaverによるMacOS9.0の稼働記録は別記事にまとめています。
Basilisk IIの入手
動作させるには、Basilisk IIのバイナリ、Mac本体のROMイメージ、ディスクイメージが必要です。
Basilisk IIのバイナリの入手
Basilisk IIの公式サイト
https://basilisk.cebix.net/
Basilisk II An Open Source 68k Macintosh Emulator
https://github.com/cebix/macemu
ソースが置かれた場所(GitHub)
Basilisk IIは公式からはソースコードのみが公開されています。実際に動かすには自分でビルドするか野良ビルドサイトに頼ることになります。
Emaculation.comというエミュレーターに関するコミュニティがあり、ここでBasilisk IIも扱われています。ここで、Windows10用、macOS用、Linux用に野良ビルドされたバイナリが入手できます。
Windows10用に野良ビルドされたバイナリはここから入手します。
https://www.emaculation.com/forum/viewtopic.php?f=6&t=5282
BasiliskII for Windows
Mac OS X用に野良ビルドされたバイナリ
https://www.emaculation.com/forum/viewtopic.php?f=6&t=7361
ブート可能なSystem7.0ディスクイメージ
http://www.emaculation.com/System70_boot.zip
ethernet driver, Mac OS ROM, HFVRxplorerが入っているパッケージ
https://surfdrive.surf.nl/files/index.php/s/g3bHyqOg1326AXF/download
ROMイメージの入手
Basilisk II用ROMイメージは、Macintosh Quadra630, LC630に搭載ロムから吸い上げたものが使用可能です。筆者の場合、かつて所有のLC630から吸い上げて確保しておりましたが、今時Classic Macintoshの実機なんて見つからないでしょうから、ネットで調達することになるでしょう。 「quadra rom download」あたりでググるとそれなりに見つかりますね。安全かどうかはわからないけど。
OSインストーラーの入手
Basilisk IIはMC68020~MC68040のCPUを搭載したMacintosh IIciまたはMacintosh Quadra900をエミュレートします。Macintosh IIci, Quadra900で動作可能なシステムソフトウエアが必要です。
System7.0~Mac OS 8.1(日本語システムでは漢字Talk7.1~Mac OS 8.1)の範囲のインストーラーを入手します。
入手先はメルカリ、ヤフオクなどですが、ヤフオクはやたら高価なものが多いですね。入手にあたり一つ注意しなければならないことは、当時のOSのCD-ROMには、Macintoshのどの機種にでもインストール可能なパッケージ版と、Macintosh本体に付属していた機種依存版の2種類が存在し、Basilisk IIにはパッケージ版しかインストールできないということです。正確には、機種依存版でも条件が合えばBasilisk IIにシステムをインストールすることは可能なものもありますが、CD-ROMからのブートはまず無理でしょう。その場合別途Basilisk IIから起動できるディスクイメージが必要になります。 メルカリなんかで安いと思って機種依存版CD-ROMを購入しても、下手すれば不燃ゴミになるだけです。
このような白いパッケージに赤い文字のCDケースに入ったものは機種依存版です。
どうしてもインストーラーが入手できなかったら、ネットで調達することも可能です。英語版システムのインストーラーは比較的容易に見つけることができるでしょう。漢字Talkのインストーラーも丹念に探せば見つかります。これらのファイルをダウンロードして利用する場合は、安全性に十分注意してください。ウィルスが仕込まれているかもしれません。
https://macintoshgarden.org/apps/kanjitalk-7-cd-rom
Macintosh Garden
https://winworldpc.com/library/operating-systems
旧OSダウンロードサイト
ダウンロードする場合は、拡張子がzip, sit, bin等のファイルが見つかると思いますが、Windows上で扱おうとすると、インストーラーのディスクイメージ(dmg, iso, cdr)をzipでアーカイブしたものがもっとも扱いやすいです。拡張子がsit, binの場合はClassic Macintosh環境が無いと難しいと思います。
Basilisk IIのインストール
(1) 実行用ディレクトリBasiliskIIを作成。
(2) emaculation.comからダウンロードしたBasilisk IIは、zipでアーカイブされています。zipをBasiliskIIディレクトリに展開します。
BasiliskII\
BasiliskII.exe
BasiliskII_keycodes
BasiliskIIGUI.exe
*.dll
(3) Macintosh ROMイメージをBasiliskIIディレクトリに入れる。
例:「Mac OS ROM」
(4) ディスクイメージ化したMacintoshシステムインストーラーをBasiliskIIディレクトリに入れる。
例:漢字Talk7.5.3のインストーラー「KT7.5.3-Japanese.dmg」
BasiliskII\
BasiliskII.exe
BasiliskII_keycodes
BasiliskIIGUI.exe
*.dll
Mac OS ROM
KT7.5.3-Japanese.dmg
(5) vmの初期設定
BasiliskIIGUI.exeを起動し、vmの設定を行います。
漢字Talk7.5.3のインストールを例に説明します。
BasiliskIIGUI.exeを起動直後
仮想ディスクの設定
「Add…」をクリックし、漢字Talk7.5.3インストーラーイメージを設定します。
「Create…」をクリックし、インストール先の仮想ディスク(200MB)を作成します。仮想ディスクファイルの拡張子は「hfv」。
仮想ディスク設定後
ディスプレイサイズを設定します。サウンドは適切なドライバーが入っていないのでDisableにする。
キーマップテーブルに付属の「BasiliskII_keycodes」を指定します。
メモリは32MB~128MB程度。漢字Talk7をインストールする場合はModel IDをMac IIciに、MacOS8をインストールする場合はModel IDをQuadra900に設定します。
JIT Compilerを有効にすると速くなるはずなんだが…今時のPCだと元々速い。
漢字Talk7/MacOS8のインストール
BasiliskIIGUI.exeの設定を終えたら「Start」をクリック。
まずは仮想ディスクを初期化。ヴォリューム名は伝統に従い「Macintosh HD」。
インストーラーを起動。インストール先ディスクを「Macintosh HD」にして、「インストール」をクリック。
インストールが始まる。System6時代から続くお馴染みのアニメーションを見ながら待つ。当時は何時間かかかったと記憶していますが、今ならエミュレーターで1分もかからない。
インストールを終えたら一旦システムを終了。今のmacと違い終了は「特別」メニューの中にある。
インストーラーイメージを「Remove」し、「Start」。次回からはBasiliskII.exeのダブルクリックで起動する。
漢字Talk7.5.3のデスクトップとご対面。
次のステップ
漢字Talk7/MacOS8のインストール直後は、はシンプルなOS機能のみで、21世紀のOSのように実用的なアプリケーションは入っていません。どこかからアプリケーションを調達しなければ、単なるインストールごっこで終わってしまいます。
手っ取り早いのは、当時のコンピュータ関連雑誌に付録のCD-ROMを入手し、HFS+パーティションをディスクイメージ化してvmにマウントすることなんですが、さすがにBook Offに行っても1990年代のコンピュータ関連雑誌なんて置いてないでしょうね。
ネットで調達するのがお手軽です。今時Classic Macintosh用のアプリがネットに置いてあるのか?とお思いでしょうが、あるんです、合法的なやつが。いつまであるんかはわかりませんが。
BasiliskII上のClassic Macintoshはネットに繋がっていないので、ここから直接これらのアプリをダウンロードすることはできません。Windows10等、別のプラットフォームでダウンロードする必要があります。
Classic Macintosh用のアプリの多くはMac Binaryというファイル形式になっており、これをClassic Macintosh以外のプラットフォームで扱うには難儀します。本サイトの別記事で、Classic Macintosh用のアプリをダウンロードして、Classic Macintoshの仮想ディスクに持っていく手順を詳しく解説します。
ギャラリー
System7.1+Japanese Language Kit
System7.1以降のシステムは多言語対応されており、各国版のLanguage Kitを導入することでローカライズできた。System7.1の時代はインターネットは普及しておらず、いわゆる「パソコン通信」の時代。当時主流の1つNIFTY-Serveに繋ぐためのアプリ。
漢字Talk7.5.3
Webブラウザ(Netscape Communicator)を起動してみた。BasiliskIIからはネットに繋げられないので使えないが…
MacOS8.1
これくらいになれば、21世紀のOSと遜色はないが、OSとアプリが同じメモリ空間で動いていたので、アプリがコケればOSも巻き添えを食らってコケる。今から振り返るとオモチャみたいなもの。
ベンチマークテストをしてみた。BasiliskIIエミュレーターでMacintosh Quadra605の200倍のスコア! ちなみに、Quadra605は国内未発売で、日本ではMacintosh LC475という名前で似た構成の製品が発売され、これは安価なためそこそこ普及した。
まとめ
68k MacintoshエミュレーターBasiliskIIにSystem7.0~MacOS8.1をインストールして、昔を懐かしんでみました。