vMacで検証する漢字Talkの歴史

August 20, 2021

emulatormacOSvMac

目次

はじめに

古いCDを整理していたところ、面白いCDを見つけました。Apple Developer Kaigi ‘92。1992年 東京で開催されたDeveloper会議のお土産CDです。今ではWWDCとして毎年米国のみで開催されていますが、当時は日本でも開催されていた訳だ。

apple_developer_kaigi92.jpg

CDはHFS+フォーマットなので、現役macでは読めません。少し古めのMac OS Xでマウントしてみると、初期のMacintoshの日本語版システムソフトウェア(漢字Talk)が網羅されていました。英語版のSystemディスクのイメージはネットを探すと容易に見つけることができますが、日本人はお行儀が良いので漢字Talkを違法アップロードしている方はおられないみたいなので、まさにお宝CD。漢字Talk7.5.5はかつてAppleからダウンロード可能だったようで、ネットを探すと置忘れが見つかるかも。

dev_cd_list.png

動かしてみたいのですが、Classic Macintoshは今や手元にありません。そこで、エミュレータvMacで動作させることに。vMacは現役mac/Windows/Linuxで動作するMac Plusエミュレーター。(ちなみに、Mac Plusはmacの機種名です。解像度512x384のモノクロディスプレイ一体型デスクトップMac)動作させるためには、Mac PlusのROMが必要になります。

vMacの入手方法やインストール方法は本サイトの別記事を参照してください。

vMacでMacintoshの歴代の日本語OSを振り返ってみます。

漢字Talk1.0

日本語が使えるMacintoshは、漢字Talk1.0が出る前に、「DynaMac」というMacintoshに漢字ROMを搭載したものが発売されていました。DynaMacは一流メーカーのキヤノンが開発して販売していたと記憶しています。

漢字Talk1.0は筆者の記憶には全くないのですが、今回お宝CDから発掘して動かしてみました。注目はなんといってもAppleメニューですね。リンゴマークではなく、ひらかなの「あ」。こんなんでジョブスは怒らなかったのかな。システムフォルダー内に富士山アイコンの「漢字Talk」が鎮座。

kanji_talk1.0_1.png

System1.0の一部だけを日本語化したようですね。

kanji_talk1.0_2.png

漢字Talk2.0

Osaka, Kyotoの2つのフォントをインストールすると1.5MB程になり、もはやフロッピ―ディスクだけで使うのは厳しい状態となりました。40MBハードディスク内蔵のMacintosh SE/30(約65万円)が発売され、漢字Talk2.0がプリインストールされていました。

kanji_talk2.0_1.png

kanji_talk2.0_2.png

漢字Talk6.0.7

この頃からは、OS はハードディスクにインストールして使うのが一般的になりました。当時のハードディスク容量は20MB~40MB程度。漢字Talk6.0.7のインストーラーは、フロッピ―ディス9枚組です。vMacでのインストール方法は別記事をご参照ください。

Installerディスクから起動

install_kt607_1.png

ハードディスクにインストールします

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インストーラーのフロッピ―ディスを順に入れ替えていきます。

install_kt607_3.png

ハードディスクから再起動し、デスクトップとご対面。

kanji_talk6.0.7.png

System7.0+GomTalk

System7.0(1991年)が出てOSはだいぶモダンになりました。しかし、System7.0の日本語版は出ませんでした。System6時代のOSのローカライズは、元の英語版を力づくでパッチを当てていくようなものなので、元システムがバージョンアップしたら、それを再度日本語化するのは至難だったと思われます。

そんなことはやってられないので、System7以降、OS本体と言語依存部分を分離するような根本的な改造が行われましたが、これが日の目を見るのはSystem7.1を待つしかありませんでした。2年間も待たされました。

その間、英語版のSystem7から漢字Talk6.0.7の日本語リソースを使えるようにして、System7で日本語を使えるようにする強者があらわれました。その名はGomTalk。開発者は天才ですね。

ベースとなるOSはSystem7.0

gomtalk7_1.png

System7.0のシステムフォルダーに、漢字Talk6.0.7の日本語に関するファイルを入れて、「preLaunchingScript」機能拡張と「LaunchingScript」コントロールパネル書類を追加すると、それだけでSystem7.0で日本語が使えるようになりました。魔法のようです。

gomtalk7_2.png

System7.1+Japanese Language Kit

System7.0から2年後、各国語対応のSystem7.1がリリースされました。英語版のSystem7.1に「World Script I」、「World Script II」機能拡張とフォントを入れれば、ScriptSwitcherで一瞬で各国語対応にできました。

system7.1_1.png

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漢字Talk7.5.5

System7.1の3年後、漢字Talk7.5.5がSystem7の集大成といえるOSです。

起動画面はいま風。

kt7.5.5_1.png

初期のブラウザNetscape Communicatorのアイコンも見えます。

kt7.5.5_2.png

Webアプリ版 Old Macintosh

本記事をお読みいただき、Old Macintoshに興味を持たれたら、ネットからvMac.romやデスクイメージを探し出して、自分でも遊んでみたいと思うかもしれません。実際、これらはネットで探し出せます(英語Systemは簡単に見つかりますが、日本語システムは難易度高いかもしれません)。ただ、見つけたファイルの安全性には留意してください。ウィルスが仕込まれているかもしれません。

安全にOld Macintoshを楽しみたいのなら、Webアプリがお薦めです。主に英語版ですが。

以下のGigazineの解説記事を参照

https://gigazine.net/news/20131030-mac-os-system-7-emulation/
懐かしのMac OS System 7をブラウザ上でエミュレートして再現できる「PCE.js」

WebアプリのURL
http://jamesfriend.com.au/pce-js/

別のWebアプリはPC Watchの解説記事を参照

https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/yajiuma/1055264.html
ブラウザで動く「MacOS System 7.0.1」エミュレータ

WebアプリのURL
https://archive.org/details/mac_MacOS_7.0.1_compilation

これならばWebブラウザから安全に楽しめますよ。

まとめ

Old MacintoshエミュレータvMacで歴代の漢字Talkを動かし、懐かしんでみました。


Written by questions6768 who lives in Uji, Kyoto.